
はじめに
昔からギャルゲーを好んでプレイしていて、「428 〜封鎖された渋谷で〜」の存在も知っていた。自分は“伏線回収”が凄まじいゲームを好んでいるため、そういったゲームをYahoo!知恵袋で探している時に、このゲームを提案している回答を見たことがきっかけだったと思う。昔はYahoo!知恵袋に入り浸っていた時期があった、痛々しい質問は立派な黒歴史。
2025年1月17日にSteamで実施された、スパイク・チュンソフト40周年セールにて、90%OFFの396円(税込)で販売されていたので購入した。約1年も経過してしまったが、年末年始の休暇を利用し、無事クリアすることができたので感想・レビューを記載していく。
本記事は「ネタバレあり」の感想となります。未プレイの方で、購入するかの参考材料にしたい方は「ネタバレなし」の記事をご覧ください。
良かった点
悪かった点
感想
最初に「ギャルゲー」と書いたが、厳密にはギャルゲーではないのだろう。が、面倒臭いのでテキストを読み進めていくタイプのADVは総じて「ギャルゲー」と呼ぶ。
■実写について
本作は全編を通して実在の俳優が登場人物を演じる。「街 〜運命の交差点〜」でも同様の手法が取られていたらしいが、未プレイの自分にとっては初体験だった。もちろんアニメやゲームのキャラクターに慣れている身からすると、最初はどうしても違和感はあったが、その分新鮮でもあった。
■ボイスについて
キャラクターのセリフはすべてテキスト表示で、ボイスは一切ない。たまに流れる映像シーンでも、自分の記憶が正しければ喋ってなかったと思う。良い点で言えば、ボイスを聞く必要がないのでサクサク読み進めることが出来る。ただ、やはり最初はセリフが読み上げられない物足りなさを感じた。
■本作の魅力
本作には、他のギャルゲーでは定番となっている日常パートが存在せず、渋谷で誘拐事件が発生した状態から物語が始まる。ギャルゲーというよりもむしろ推理小説に近い印象を受けた。
良い点としては、無駄をそぎ落としたコンパクトな構成で、物語の“おいしい部分”だけを抽出したような密度の高さが挙げられる。
一方で、登場人物の性格や関係性に十分に触れる前に物語が進行するため、序盤は感情移入が追いつかず、やや置いていかれている印象を受けた。しかし、その分、画面上で起こる出来事には無駄がない。一見すると些細に思える出来事でさえ、別のキャラクターに影響を与えていたり、後の展開で重要な意味を為してきたりと隙がない。意味のあることしか起こらないから読み進めていて純粋に楽しい。
そして、気付けばキャラクターの魅力と展開の面白さに深く引き込まれている。この没入感こそが、本作の本質的な魅力だと感じた。
■ストーリーについて
プレイを進める中で、”タマ = マリア”というのは予想外だった。このあたりから「面白くなってきた」という感覚があった。
ただ、マリアの行動は全体的に違和感を感じた。自身が記憶喪失であることを自覚し、家もわからず、名前すら思い出せない状態にありながら「店で売ってるアクセサリー欲しいけど、お金足りないからバイトする!」という発想に至るのは、さすがにストーリー都合が透けて見えた。マリアが快活な性格という設定を差し引いても、強引さが否めなかった。
一方で、序盤から登場していた”杖の男”が建野であることは比較的早い段階で気付いた。しかし、亜智の父親と繋がっていることは予想外だった。
終盤に向けて、登場人物たちが一堂に集結していく展開は胸が熱くなった。マリア、大沢、御法川の物語が次々とENDとなって終盤を匂わせる中で、ジャックと建野が主人公として登場するのは非常に心が躍った。
ゲーム内ではたった数時間の出来事にも関わらず、加納がどんどん頼もしくなっていくのも爽快だった。また、御法川は現実にいたら相当クセの強い人物だが、一貫して我を通していて非常に好感を持てた。
全体として、非常に上質な推理小説を読んでいる気分だった。
■終盤について
ジャックの調査によって、カナンが偽物で、実はアルファルドと判明するシーンは衝撃を受けた。ただ、終盤になって急に「アルファルドは建野より圧倒的に戦闘能力が高い」という描写が出てきのは違和感があった。
「現役の刑事が全く敵わないってどういうこと?狡猾で素性を掴ませないって話は出てたけど、戦闘能力もずば抜けて高いって今まで出てないような?」と思ったが、カナンと結びつけるために、半ば強引に出てきたものだと理解した。
実際、ジャックパートで建野に電話をかけるシーンの選択肢
B「私が着くまで持ちこたえろ。気づかれたらお前に勝ち目はない」
C「とにかくマリアを守るんだ。それがお前の役目だ」
これらの意味が、”カナン = アルファルド”という結論に至ってるかどうかで全く見え方が異なるシーンは見事だった。
マリアとカナンが同じ場所に居合わせながらギリギリ顔を合わせていない演出や、序盤のドライアイスに至るまで伏線として機能していた点も圧巻だった。
■演出について
本作は演出が優れている。
どれもセンスが良く、視覚的にも物語的にも魅力的だった。
特に、周囲が次々と“END”になっていく中で、加納と亜智のみ「TO BE CONTINUED」を背負う瞬間は痺れた。2人で始まった物語が、2人で終わる構造になっているのも美しい。TRUE ENDのエンディングが黒背景+キャストロールだけなのは少し寂しいが、最後に一波乱入れてくる演出は憎い。
■気になった点
BAD ENDの中には、数週間経過してもマリアが生存しているものがある。しかし、物語の展開上、事件を解決出来なければ、マリアはウーア・ウイルスで死亡するはず。この矛盾があるせいで「マリアへのウイルス注入はブラフか?」という“誤解”を抱いてしまった。このBAD ENDも伏線として使えていたら、作品の完成度はさらに上がったと思わずにはいられない。
■クリア後について
アニメ『CANAAN』の存在は知っていたが、428が原作であることは全く知らなかった。2026年暫定一位の衝撃。ただ、本編の実写+ボイスなしに慣れた後だと、カナン編のアニメ作画とフルボイスに違和感を感じてしまった。作風が違い過ぎて、同じゲームとは思えなかった。移植された時に、他のゲームのおまけシナリオとして追加されたのか?とも思ったが、そういうわけでもないらしい。カナン編の物語としては、アルファルドとの因縁を描きたかったのだろうが、本編に必須かと言われると微妙。全体的にファンタジー色が強すぎて、428と同じ世界観であることがすんなりと入ってこない。
鈴音編に関しては、正直本編の蛇足感を多少は感じるものの、本編中に15歳の少年が亡くなった描写は出ていたので、本編の補完としては機能していたと感じる。エコ吉編に関しては、正直存在意義がわからなかった。ただ。これを見た後に解放されるメイキング映像のスタッフロールは非常に良かった。作品の”裏側”を見せることが出来るのは実写の強みだと感じた。
まとめ
この上質なゲームを396円(税込)で経験出来たのは、あまりにも美味しい。ただし、「ゲームである必要があるか?」を考えると、多少は検討の余地が残る。というのも、小説として読んでも、ドラマとしても見ても十分成立する内容だと思う。
もちろん、これは悪い意味ではない。むしろ「媒体を選ばないほど完成度が高い」という証拠でもある。

いかがだったでしょうか?
異なる意見や感想があれば、よければコメントいただけると幸いです。


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