
はじめに
以前から気になっていた「魔法少女ノ魔女裁判」を配信にてクリアしました。配信アーカイブはこちら。
プレイ時間:約48時間
全エンド回収済み
結論から言うと、本作は本格的な推理ゲームというより、事件や魔女裁判を通して各キャラクターへの理解と愛着を深めていくノベルゲームだと感じた。推理要素を期待して購入すると肩透かしを食らう可能性はあるが、総合的に見て満足度は高く、万人にオススメできる作品だと思った。
ただし、個人的に本作品に対する世間の評価は『過大評価気味』だと感じている。『良作』だとは思うが『傑作』まではいかないな・・・といったところ。
本記事では、上記の感想に至るまでの経緯や、クリアした上での「良かった点」「気になった点」を記載します。プレイしている序盤から「これダンガンロンパそのまんまじゃん!」と思いながらプレイしていたため、随所でダンガンロンパと比較しながらの感想になることをご了承ください。
良かった点
膨大なボリューム&全編フルボイス
ダンガンロンパと同じクローズドサークル&推理ゲームではあるものの、「魔法」を取り入れることにより、比較的違和感なくタイムリープの要素が組み込まれている。同じジャンルでタイムリープが組み込まれている作品は見たことあるが、主人公のエマがタイムリープするのではなく、最初に死んで1周目の経験がほぼないヒロが2周目の主人公になるのは予想外だった。事件発生&魔女裁判の流れは同じであるものの、2人の性格が全く異なり、議論の進め方も違うのがマンネリ防止にも寄与していた。
ストーリーはかなり長く、自分はクリアするのに48時間掛かった。これだけのボリュームがあるにもかかわらず、その全てにボイスが実装されている。議論中に誤った選択肢を選んだ際の発言にも全てボイスが実装されている豪華仕様。これは声優好きとしても嬉しい。クラウドファンディング恐るべし。というかダンガンロンパもケチらずにやれや。
エマ・ヒロの主観でストーリーが進むが、実際に発していない心の中のセリフに対してもボイスが実装されており、ここまでテキストが充実しているのは一般的なノベルゲー並み。インディーゲームではあるが、そこらの企業ゲームと同等以上のボリュームがあり、クオリティも高いと感じた。
捨てキャラクターがいない
2周目で犯人と被害者が一変することで、序盤に死ぬキャラクターが空気にならず、全キャラクターに見せ場がある構造になっているのが良かった。キャラクター毎の個別ルートやダンガンロンパのような自由行動は存在しないが、エマとヒロで交流する相手が変わるため、メインストーリー内で自然とキャラクター全員の理解を深めることが出来るのが良かった。何気ない会話や細かいやり取りの描写が丁寧なことも合わさり、プレイヤーが自然とキャラクターへの理解や愛着を深めることに大きく寄与していたと感じる。
捜査パートの簡略化
1章の時点で、事件発生後の捜査パートがかなりあっさりしているのが印象的だった。ダンガンロンパや逆転裁判では、事前に現場検証をしっかり行って証拠を十分に揃えた上で裁判に臨むのが通例だったため、まだほとんど状況を把握できていない状態で鐘が鳴り「え!?もう裁判始まるの?!」と驚かされた。もちろん、現場を捜査して証拠を揃えていく面白さもあると思うが、本作はこの割り切りによって他作品にはないテンポの良さを感じたので高評価な点だった。2章は事前投票が始まり、どの事件でもヒロが疑われ続けて一切捜査に参加できなくなるため、1章以上にテンポが加速する。2周目の中弛み防止が主の目的だと思うが、裁判の中での会話を通じて少しずつ証拠や情報が揃っていく展開も新鮮で面白かった。
正直、本作を純粋な「推理ゲーム」として期待してプレイした人にとっては、捜査と言っても指定された場所を選んで会話を読み進めるだけなので、“調査している感”は薄く感じるかもしれない。特に2章では捜査パート自体が実質全カットとなるため、「求めていたものと違う」と感じる人も一定数いると思われる。ただ自分の場合、ゲーム内で与えられた情報を深く咀嚼しすぎず、事前考察を最小限にしてストーリー展開を素直に受け止めるようにしているため、捜査パートの簡略化はテンポよく読み進められて好都合だった。
会話主体の裁判
本作の裁判パートは、ダンガンロンパの「ノンストップ議論」と同じ手法が取られている。ダンガンロンパでは裁判中に「これいる?」と思うようなミニゲームが挟まるのが定番。それらを完全否定するつもりはないが、若干鬱陶しく感じることもあった。本作は純粋な議論のみで進行するため、会話に集中できて快適だった。
また、ダンガンロンパのキャラクターは「頭の良い組」と「頭の悪い組」におおよそ分かれており、数人の「頭の良い組」が議論を引っ張って「頭の悪い組」の頓珍漢な発言を論破していくのが基本的な流れだった。しかし本作では明らかに知能が劣っているキャラクターがおらず、各キャラクターが一定水準かつ同程度の知能を保有しており、明らかに間違っている発言が少ない。発言量の多少はあれど全員で議論を回す構成になっていた点が好印象だった。
程よい推理難易度
正直に言って、本作のトリックはダンガンロンパほど手の込んだものが少なく、事件の規模も一回り小さい。周回要素があるため単純に事件数が多いことから、ひとつひとつの規模をコンパクトにしていると思われる。また、ダンガンロンパでは「裁判で逃げ切れば自分だけが脱出できる」という明確な殺人のメリットがあったため、犯人側も綿密な計画を立てて犯行に及んでいるケースが多かった。
それに対して本作では、殺害するメリットが存在せず、魔女因子によって殺意が増幅され衝動的に及んだ犯行が多いため、トリックが比較的シンプルになっているとも捉えられる。ただ、そのおかげで「ゲームを進めながら、プレイヤー自身もリアルタイムに一緒に推理できる」ぐらいの程よい難易度になっていた。トリック自体も多少無理がある箇所はありつつ、破綻しているところはなかったと思う。
全ての事件に魔法が関与しているため、本作独自の『魔法』という要素を活かした展開を楽しめる反面、魔法から犯人を逆算しやすく、推理ゲームとしては弱点を抱えているとも言える。しかし、その分魔法を取得するに至った経緯や魔法に関するエピソードなど、キャラクターの深掘りには一役買っていたと思う。
主人公(二階堂ヒロ)が格好良い
2章の主人公であるヒロについて、最初は「煽り耐性0、協調性の欠片もない冷徹女」と思っていた。しかし、意外と面倒見が良くて人情味に厚い。自らの行いを「正しさ」で判断しようとしているが、罪を犯した仲間が処刑されるのを見て、犯人が裁かれるのは「正しい」と理解しつつも割り切れず、葛藤しながら処刑ボタンを押してボロボロと涙を零す。自分の中に矛盾を孕みながらも突き進んでいく姿が非常に魅力的だった。
・冷徹になり切れない人情味と矛盾を抱えている
・正しさに拘りつつ、偽証してでも信用を得ようとする泥臭さ
・セリフ回しがいちいち厨二臭くて格好良い
このダークヒーロー感、目的のために手段を選ばない一途さは『コードギアス』のルルーシュを彷彿とさせた。他作品の主人公と比べてもかなり好きなキャラクターだった。

デフォルトでドヤ顔なのもそれっぽい
アツい展開・演出
最終章については、予想外の展開は起きず概ねイメージ通りで良く言えば王道、悪く言えば無難な展開と感じた。
ただ、1周目と2周目を通じて忌避してきた「魔女化」を、12人全員に説得(?)して回る流れはアツかった。基本的に1人ずつ個別の対話で、禁忌の振り返りに近いこともあり、数人魔女化したあたりで若干作業感が出てきたものの、2章1話でマーゴに対して偽証した「私はみんなを信じている」が反論に変わっていたり、ここまで唯一魔女化していなかったシェリーが実質ラスボスであったり、見所も多かった。
ユキを召喚してからの展開は、全員で力を合わせて強敵に立ち向かう少年漫画のようなアツさがあった。ヒロからエマに視点が交代したり、議論中に仲間の魔法が使えたり、仲間と一緒に反論したりと「こういうのでいいんだよ」的な演出が多くあった。正直、本格的な推理やミステリーよりも友情や絆といった熱血的要素がこの作品の本質な気がする。
気になった点
「魔女裁判」のルールの甘さ
魔女裁判のルールについて以下のように説明される。
・特定できなかった場合は全員処刑する
まず最初に思ったのが「特定できなかった」というのはどういった状況を指すのか?管理者側が常に全員の動きを監視しているわけでもなく、投票後にその結果が「正解かどうか」の判定もない。現に1章4話では、エマは犯人でないにもかかわらず最多投票で処刑されかけていた。つまり、最多投票を集めた人物が「本当に犯人だったか」は関係なく「最多投票の人物を処刑する」ということになる。
となると、「特定できずに全員処刑される」というパターンは存在しないのでは?考えられるのは「誰も投票しなかった場合」や「同票が続いて1人に決められない場合」だが、そんな状況が発生するとは思えないし、実際に作中でこのルールが有効に使われることはなかった。
そもそも運営側の魔女裁判を開く目的が「大魔女を探すこと」延いては「魔女化」であるため、裁判自体のルールに拘りがなく、ガバガバな設定にしているという運営側の「杜撰さ」を表しているのかもしれない。この魔女裁判のルールの穴であったり、黒幕側の杜撰さを突いた魔法少女からの謀反的な展開を期待したが、特になかったので少し拍子抜けした。
また、ダンガンロンパでは明確に「犯人を特定出来なかったら全員処刑」と裁判の度に念を押されるため、「絶対に犯人を見つけなければいけない」という強い緊張感と疑心暗鬼が生まれて裁判に臨んでいた。一方で本作は「最悪間違えても自分が選ばれなければ死ぬわけではない」という構造になっているため、裁判に挑む本気度が少し薄れてしまったように感じられた。
読みやすい展開
基本的に犯人が処刑直前に自身の【禁忌】を明かす構成になっているため、2章の1話にてマーゴが犯人だった時点で、『1章で禁忌が明らかになっていない「ナノカ、ノア、ハンナ」が残りの事件の犯人になるんじゃないか』と予想していたら、見事に当たってしまった。
「2章は1章とは別の犯人になる」とゲーム側からの匂わせがありつつ、1章と同じ犯人や加害者をあえて出すような”裏切り”を期待していたが、そういったことはなく、綺麗に禁忌が明かされていない者が順番に殺人を犯すため、非常に展開が読みやすかったのが残念だった。
とはいえ、このお陰で全員にバランスよくスポットが当たり、キャラクターの出番をある程度平等に確保できていたので「展開の読みやすさ」と「各キャラクターの出番や掘り下げ」は、トレードオフの関係にあると感じた。
ストーリー構造について
構造やキャラクターの対比は非常に綺麗。
1周目(エマ編)は、リーダーとして脱出を計画したら疎まれて殺されかけ、仲良し4人組の中で殺人が起き、残った1人が黒幕とこれでもかとエマを追い詰める。何度も立ち上がってきたエマが、最後は魔女化して全てを終わらせる絶望を描いた「困難に立ち向かう物語」。対する2周目(ヒロ編)は、エマへの憎しみを抱えていたヒロが仲間との触れ合いを通じて「正しさ」を見つけていく「成長の物語」。物語全体を通じた人間関係の描写や会話のテキストは非常に良かったし、実際そこが本作の人気やSNS等でのカップリング・二次創作の盛り上がりを支えていると思っている。
ただ、ストーリー全体を大枠で捉えると「物足りなさ」を感じてしまった。 本作の根幹に関わる重要な事実──大魔女の正体、黒幕の正体、大魔女召喚の儀式、魔女を殺す薬、魔女を殺す魔法といった要素のほとんどは1周目の時点で出揃ってしまう。もちろん、それはプレイヤー視点の話であり、ヒロは1から自分で情報を集めていくわけだが、2周目で判明する新事実はほとんど存在しない(強いて言えばナノカ周り)。「物語が進むにつれて徐々に舞台状況が判明し、最後に大どんでん返しが来る」という展開が好きな自分にとって、終盤の展開に伏線回収のカタルシスが存在しなかったのは寂しく感じた。
第四の壁
2章でココの能力について語られる際、「異世界(プレイヤー側の世界)と繋がる」という描写があった。 正直「1周目の自分と配信を通じて繋がる」というのもギリギリな気がするが、第四の壁を越えてくる演出は少し冷めた。
「第四の壁を破る演出」などのメタ要素そのものが嫌いなわけではない。それがシナリオの核となるゲームもプレイしてきたし、好きな作品もある。しかし、本作におけるこの演出は取って付けたような雑さがあり「とりあえず入れました」的な印象を受ける。
(別次元の存在なのか、自分たちをゲームのキャラと認識しているか等)
の説明が一切ないため「は?いきなり何?」という感情になった。展開として飛躍し過ぎていると感じる。
あの演出の主な目的は「既に亡くなっている島の大魔女の声をプレイヤーに届けるため」だと思うが、であればなぜプレイヤーにだけその声が届いているのかも謎。これなら最初からない方が良かった。ナノカの幻視が島の大魔女の声を届ける展開の方がよっぽど自然。

エマが「他の誰か」を示唆してくるのも違和感しかない
他世界線との記憶の共有
ミリアの「入れ替わりの暴走による他の世界線との記憶共有」は、流石に拡大解釈が過ぎるのではないかと思った。
それ、入れ替わってないじゃん。共有してるじゃん。この事象に対して、ヒロが畳み掛けるように「ミリアの魔法は”精神共有”だったかも、そこにココの千里眼や私の死に戻りが作用したかも」とごちゃごちゃ言っているが、制作陣からの言い訳にしか見えなかった。弁護士のおじさんやマーゴと入れ替わっている描写があった以上、ベースにあるのは間違いなく「入れ替わり」の魔法であるはず。実は「精神共有」の能力だったとしたら、その能力で体ごと入れ替わることが可能ということになるが、さすがに厳しい。最後のハッピーエンドに向けて「他の世界線との記憶共有」が必要になり「入れ替わり能力の暴走」という形で無理やり着地させた印象が否めない。
最初からミリアの魔法が「入れ替わり」ではなく「感覚共有」や「精神共有」という設定であれば、まだこの展開にも納得出来た。しかし、ミリアのトラウマからの脱却は「入れ替わり」前提の話であるため、ここは変えるわけにはいかなかったのだろうと推察する。
ただ、個人的には、そこまでして全員が1周目と2周目の記憶を引き継ぐ必要はなかったのではないかとも思う。シュタインズ・ゲートのように「他の世界線の記憶もうっすら残っている」程度の塩梅でも良かったのではないか。記憶が無かったとしてもまた新しく絆を深めていける──そう思わせてくれるだけの描写は積み重ねられていただけに、少し惜しいポイントだった。
犯行動機
「え、そんなことで殺したの?」と思うような犯行動機が大半だったが、前提として「魔女化が進むと殺意が増幅する」という設定が提示されていたため、「まあ、そうなんだな」とそこまで違和感なく受け入れられた。「この子たちは本当は良い子であり、全て魔女因子が悪い」という意図が透けて見えるが、ヘイトを集めるキャラクターを作らない方がPRしやすい現代の風潮を考えると「上手いこと設定考えたな~」とも思える。
気になったのは1章の3話。
「魔女化したくないハンナを、友情のためにシェリーが殺害した」という話で、以下の流れ。
・ハ「魔女化したくない」→ 分かる
・ハ「いっそ私を殺してほしい」→ 自殺は?と突っ込みたくなるがギリ分かる
・シェ「でもハンナを殺せば魔女として処刑されてしまう」→ わかる
・ハ「なら完全犯罪を目指すんですの!」→ え?
「完全犯罪」をお願いされたシェリーが、友達の望みを叶えるために密室トリックをしてまで生き抜こうとするのは納得がいく。普通の人なら躊躇する一線を、友の為なら越えてしまえるのは実にシェリーらしく、彼女の友達思いである面と倫理観が壊れている面が顕著に溢れている良い描写だと思う。
問題はシェリーに介錯を頼む際、ハンナが真っ先に「完全犯罪」を持ち出す点。これは「シェリー以外なら誰かが代わりに疑われて処刑されても構わない」という考えの発言のはず。自分はこの発言を「ハンナらしくない」と思った。本来、仲間思いなハンナであれば真っ先に思い浮かべるのはアリサのように「自殺」ではないか。百歩譲って自殺する勇気がなくて誰かに頼むとしても、他の仲間に迷惑が掛からないように「事故死に見せかけて殺してほしい」と口にするのではないか。
メタ的なことを言えば、本当に殺人を犯した上で生き延びたいのであれば、死体を焼却炉で処分したり、森の中に穴を掘って隠したり事件そのものを隠蔽する手が有効なはず。しかし、それでは「魔女裁判」が行われないためゲームとして都合が悪い。だからハンナは自身の性格にそぐわない「完全犯罪をシェリーに依頼する」という役割を担わされたのだと推察する。物語への没入感にも関わるため、ここはハンナの性格に沿った整合性のある発言にして欲しかった。
上記の性格と言動の不一致を避けるため、例えばシェリーから「それだと私が魔女として処刑されてしまいますが」と指摘された際に「ぐぬぬ、確かにそうですわね……。今の発言は忘れてくださいまし。」のような思い留まる程度の描写で済ませると、ハンナらしい言動と言えるのではないか。その上で、着々と魔女化が進行していくハンナの苦しむ姿に耐えかねたシェリーが自らの意思で手を下す──という展開の方が、お互いのキャラクター性にも合致するし、友情を見せつけたことにもなるのではないかと思った。
「完全犯罪」と口にしたのも「魔女化が進んでいたから~」と返されたら、「魔女化便利すぎて草」と返します。
大魔女について
ユキがこれまで人間に受けてきた仕打ちを考えれば、人間に対する復讐心は極めて自然だと思う(復讐そのものが正しいかは置いといて)。にもかかわらず、彼女が全てを抱え込んで消滅するのはどうにも腑に落ちない。世間の感想を見ると「まあ死んで当然」と捉えている人が多く「メルルもあれだけ会いたいと思っていたユキと一緒に逝けたんだから本望」といった意見も散見された。個人的には、それはあまりにも人間側に都合が良すぎると感じる。
「ユキが死んで魔女が消滅する」という一方的な結末に納得感が薄い。 島の大魔女が「魔女はもう滅びかけていたから人間のことは恨んでいない。」と言っていたが、全く納得できない。仮に魔女という種族が衰退していたとしても、人間から迫害されることを肯定する理由にはならないはず。「寿命が近いから殺されても文句ない」ぐらいに飛躍した話。なんというか、島の大魔女の意見があまりにも人間に都合が良すぎる。この島の大魔女のビジョンも、人間側が捏造したものだったりして・・・。(ないと思うけど)
本来、ユキが人間に復讐心を抱くことは自然であり、それに対してエマ達が不当であると主張するのも自然。どちらにも言い分はあるはず。ユキは自身を「500年も復讐心を抱き続けた化け物」と称していたが、それなら人間側は「過去の罪から目を逸らしてのうのうと生きてきた化け物」になるのでは。ここで言いたいことは、どちらか一方だけが悪というわけではなく、双方が対等な立ち位置であるということ。その状況下で、魔女側だけが処罰されるような幕引きになっている点に強い違和感を覚えてしまう。
めっちゃめちゃベタではあるが、例えば以下のような着地点では駄目だったのだろうか。
とんでもなく王道な展開である自覚はあるが、そもそも本編の消滅エンドも展開としてはベタだとは思うので勘弁してください。それはさておき、こちらの方が人間と魔女の決着として妥当じゃないだろうか。そもそも、島の大魔女たちも「ユキには幸せになってほしい」と願っていたわけで、ユキが生き延びる方が島の大魔女の願いにも沿っている。
ただ、上記のような終わり方は「本作単体で綺麗に完結させるなら」という前提の話かもしれない。最後にユキから「この会話は聞かれている、どこにも逃げられない」という発言もあった。つまり、「まだ事件は解決してない=更に上位存在がいて、それから逃げられない」という、次回作以降の匂わせのために殺されたのか、という気もしてきた。結局、ユキも制作の都合で振り回された犠牲者だったのかもしれない。そう考えてたらなんか虚しくなってきた。
ていうか「聞かれてる」って誰に?政府?国?
じゃあやっぱり人間が「悪」ってことになるけど、魔女側はそれでもいいのか?魔女因子を全部巻き取った大魔女が、何の能力も持たない人間から逃げられないの?
色々と煮え切らない。
やたら多いバッドエンド
この作品はそこそこの頻度で選択肢が登場するが「選んだ選択肢で話が変わる」といったことはなくストーリーは一本道であり、誤った選択肢を選んだ場合はバッドエンドに直行する。このバッドエンドがやたら多く、かつ本編には直接関係ないものだらけなのが気になった。
最終章の「サバトの儀式を行わない」のように、本編に直接関係のあるバッドエンド(というよりifエンド?)であれば本編の補完として必要だと思うが、全く関係がないバッドエンド(穴を掘ったら地雷に当たって死亡、鏡の世界に閉じ込められて終了など)はエンディング数を水増ししてるだけで不要と感じた。
その割に少ないスチル
プレイしていてスチル(イラスト)の少なさが気になった。バッドエンドでも文章だけの説明になっていることがほとんどで「ここにスチルあったらいいのに・・・」というような思いは何度もよぎった。これだけストーリーのボリュームがあり、かつボイス数も大量に実装されているのに対して、スチルの数は見合っていないぐらいに少なく感じた。ここはSwitch版で改善されるかもしれない。
→めっちゃ改善されてた。Switch版の人はおめ。
好きな話
1章 2話
純粋にトリックが面白い。犯行に魔法を使用しているものの、あからさまではないため即犯人に繋がりにくい。最初のアリバイの話やミリアとの関係性から「アンアンは除外!w」と決めつけていたので衝撃だった。アンアンがエマを憎むのは納得するとして、ミリアからの「実は入れ替わってました~w」を聞いて、裏も取らずにすんなり信じて凶行に及んでいるのはちょっと無理があると感じた。これも魔女因子のせい?そうですか。
2章 2話
エマ・ヒロのシャワールームでの約束や、ココがシャワールームを背景にして配信してる事実が絡んでややこしくなってるものの、紐解いてみるとナノカの犯行自体は至極単純という構造が綺麗で良かった。ついでにプレイしながら気持ちよく推理できたから気分が良い。
ナノカと看守には何らかの関係性がある伏線や、地下にあった過去の魔女裁判の資料にナノカの名前があるなど、1章での伏線が回収されたのが良かった。普段低い声のナノカが感情を荒げて高い声を出すところは胸が締め付けられそうになる。
2章 3話
2話で「ヒロがエマを殺そうとしていた」のに対し、3話では「エマがヒロを庇う」という対比構造が良かった。事件の傍観者だったエマが身代わりになり、当事者だったヒロが、エマの行動を”お節介”ではなく”覚悟”として受け止め、エマを救うことを目的として裁判に挑んでいるところに、二人の関係性の変化とヒロの感情の変化が見えて非常に良かった。ついでに犯人となったノアの反論が意外に鋭く、挑戦的な顔が非常に良い。ただ局所的な雨が話題に出た時点で「あ、ノアが犯人だ」と早々に思考はロックされた。結局合ってた。
キャラクターごとの感想

二階堂ヒロ

このゲームが面白かったのはヒロのおかげ。(※個人の感想)
黒髪ロングは全く好みじゃないので第一印象は良くなかった。それでも2章で心を鷲掴みにされた。ヒロが2周目でさっさとみんなの情報を開示させて、自らの殺人計画を練りつつ各方面に人間関係を構築していくのは1周目にはない爽快感があった。また、裁判でも自らの疑いを晴らすためであったり、特に「そこまで嘘をつく必要なくね?」という場面でも積極的に偽証を使って荒らしていくのが気持ち良い。自分はヒロの傍若無人な振る舞いやエマへ殺意を向ける姿に終始キャッキャしていたが、逆に言えばヒロというキャラクターを好きになれなかったらこのゲームの評価は相当低くなっていたと思う。
それくらい自分の中でヒロというキャラクターの魅力が作品全体を引っ張っていた。
黒部ナノカ

基本的に牢屋敷内にいなくて接触自体は他キャラと比べても少ないはずなのに解像度が高い。「お姉ちゃん子、甘いものが好き、お菓子作りが好き」と見た目のクールさからのギャップが良い。
1章2話でめった刺しにされているミリアを目撃した上で、冷静に(笑)鍵を持ち帰ってるのが判明した時は「何やってんだお前ェっ!!!」と思ったが、この第一発見者が現場を荒らすのは『ダンガンロンパ』の十神オマージュか?(2回目の事件&被害者が磔)
ヒロと同じく黒髪は好みじゃない。にもわらず好きなキャラ順で2番目。髪型と顔は好き。思い込みで現場荒らしたり、大事なリボンを必ず落としたり抜けてる所もあるけど、メルルに襲撃された時は1発銃弾を食らった状態でめっちゃ証拠残してるし、執念や覚悟が行動の端々に見えるのが良い。こういう使命感を体現してるキャラ好き。
城ケ崎ノア

普段子供っぽい話し方や性格をしているのに、2章3話で犯人になった時に初めて見せる数々の表情や鋭い反論のギャップが非常に良い。
最初に殺された時は「あ~はいはい、有名声優は金かかるから最初に退場させる系のやつね」と冷笑していた。愚かな自分を許してください。
夏目アンアン

銀髪ロングで見た目はドストライクの筈だけど、第一印象はそうでもなかった。1章2話の逆恨み的な殺人で更に好感度は下がった。その後、2章でヒロから「むやみに洗脳魔法を使うんじゃない。」と窘められて、驚いた顔のまま素直にコクコクと頷くシーンで「あれ、可愛いかも。」と思い始めた。
え!?それだけで4位?!出世しすぎぃ!
声がいいね(◜︎◡︎◝︎)
アンアン以外の魔女化は何かしらグロテスクというか、複眼だったり痣が出来たり『奇妙な変化』が生じている。それに対してアンアンのみ「ただ可愛くなっているだけ」の『進化』したような見た目になっていて「こいつだけズルくね!?」とクリア後にしばらく騒いでいた。

ズルい(可愛いけど)
桜羽エマ

1章1話、2章1話の裁判での処刑後に笑みを浮かべている描写はユキによる仕業ということでいいんでしょうか。というかユキってどこにいるんだ。1章のエマ編がユキ視点ということであれば、エマの中にいるってことでいいのか。ユキは万年筆が依り代と言っていたが、2周目ではヒロが万年筆を持っているにもかかわらず、マーゴの処刑後にエマはニヤリとしてる。(= ユキはエマの中にいる?)
『1章の最後でエマが「魔女を殺す魔法」を使えるのはユキがエマに与えたからで、それとは別にエマ本来の魔法が別にあるはず。エマの魔法ってなんだろう(ワクワク)』というアホな勘違いを終盤までずっとしてた。
2章ではヒロと一緒にエマのことを疑っていた。ただ、笑みを浮かべたから疑っていたわけではなく、ノベルゲーの中には周回すると選択肢によって黒幕が異なる作品もあったので、2周目は実はメルルが黒幕じゃないとか、エマが何か隠してるとか、ユキに乗っ取られたとか、色々考えた上でヒロに乗っかって「エマ怪しい!」となっていた。結果、ただの良い奴だった。
ユキが虐められていたのは、ユキ自身がそう仕向けていたというのは読み取れたが、それを見捨てたのはユキの仕業なのか、エマ自身の行動なのか、未だにわかってない。それがエマのトラウマとして存在してるということは見捨てたことは事実でいいのかな。エマの性格を考えるとただ見捨てることは性格上出来なそうだけど・・・。
主人公としては普通。ちょっと自責思考が強すぎるのは考え物かも。主人公らしい主人公だと思う。
橘シェリー

『魔法少女ノ魔女裁判』という作品を最も象徴するキャラクターだと思う。いるといないとではゲーム自体の印象がかなり変わると思う。ベタだけど普段から甲高い声で喋ってるキャラクターが真剣な場面で低い声で喋り始めるのはゾクゾクする。誰が殺されようとも、何が起きようとも常に同じテンションなのは不気味であり、安心感もあった。
遠野ハンナ

キャラクターの立ち絵とCGで見た目の乖離が一番激しい気がする。CGの方は非常に可愛い、立ち絵の方は申し訳ないけどちょい微妙。金髪ツンデレなんて本来であれば好みド真ん中な筈なのにあまりハマらなかった。出会った頃からレイアのことを嫌いだったのは、レイアが本物のお嬢様だからってことでいいんでしょうか。あんまりレイアにお嬢様感ないけど。
正直、13人の中で魔女化した姿が一番可哀そうな気がする。顔に入ったヒビが皺に見えておばさんみたい。
宝生マーゴ

1章は全ての事件でマーゴが犯人と疑っていた。ごめんなさい。自分でプレイしてる時はそこまで好きでもなかったのに、何回か実況を見続ける内になんか好きになってきた。
声がいいね(◜︎◡︎◝︎)
佐伯ミリア

誰に対しても優しく常に中立の立場であるということは理解した上で、あまり好きじゃない。その態度は「優柔不断」や「決断する責任からの逃避」とも捉えられるから。たとえ間違っていたとしても、自らの意思で決断するキャラクターの方が好き。裁判で弱い者の味方をし続けるという性格は、今までにいそうでいないキャラだと思った。
蓮見レイア

最初に犯人だった時は「あ~はいはい、有名声優は金かかるから最初に退場させる系のやつね」と冷笑していた。(デジャブ)愚かな自分を許してください。
キャラとしての面白さの前に、声優の小清水さんの凄さが目に留まる。やっぱり小清水さんが演技が一番上手い声優だと思う。
このゲームのギャグ部分のほぼ全てを担わされている。2章が面白かった要因の1人かも。ヒロに好感を持ってるのは良いとして、まさか個別エンドまであるとは思わなかった。レイアはともかく、ヒロがレイアに対してそこまで特別な感情を抱いていると察する描写がなかったので、正直戸惑いが大きかった。
紫藤アリサ

ヤンキーそうに見えて実は良い子、というのはわかるんだけど、正直あんまり印象がない。嫌いでもないけど、特に好きでもない感じ。13人の中で一番生き残っているはずなのに、おかしいね。
氷上メルル

1章4話まで喋り方がわざとらしくて常に泣いてて鬱陶しいと思っていた。1章5話で黒幕と判明してからは自然と「メルカス」呼びに変わってた。
・大魔女に会うことが至上命題
という意思は一貫しているキャラクターであることは次第に判るため、最初ほどの嫌悪感はなくなった。3周目でヒロが「大魔女に会うために魔女裁判やるよ~」と言ったらニッコニコで「ヒロさん!さぁ早くやりましょう!」と犬みたいに尻尾振ってたのはおもろかった。
沢渡ココ

おじいちゃん思いの良い子~!! とでも言うと思ったか?
他の実況動画などを見てると「推し=じいちゃん」が判明した時点で「ココのことが好きになった」という人が多いけど自分には理解できなかった。それを言ったらレイアは母親想いだし、描写がないだけでエマやヒロも家族のことは想っているのでは?おじいちゃん子であることが好きに繋がるか?と思ってしまった。
ついでに、おじいちゃん子だからって普段の言動が何でも許されるわけじゃないからね?「私以外さっさと死ねばいい」とか、いくら不安の裏返しと言ってもライン超えの発言だらけでドン引きしていた。13人の中で最も過酷な過去を持っているとは思うけど、その経験を経てその発言が出てくるってどうなの?自分の家族を殺した殺人犯と共鳴でもしてるの?
圧倒的に人気最下位だと思っていたら、意外と好意的に捉えてる人が多くて驚きだった。そういう人が映画のドラえもんを見て「ジャイアン良い奴」とか言い出すんだろうな。
2章2話でナノカに殺されるきっかけにもなった「魔女なら死んでもいいっしょ」発言も酷い。これが本性では?
総評
改めて考えると、本作は「推理ゲーム」というよりも「推理要素を取り入れたノベルゲーム」と捉えるのが一番しっくりくる。どうしてもゲーム性からダンガンロンパと比較したくなるが、本来比較するべきはノベルゲームかもしれない。
開発者のインタビューで
という旨が語られていたが、その役目は十二分に果たしていると感じた。実際に本作はSNSを中心に大きくバズり、高い話題性を獲得したことで、これまでこの手のジャンルに触れてこなかった層を含む多くのプレイヤーに届いていると思う。制作陣の狙い通り、名作たちの遺伝子を今の世代へと繋ぐ役割を果たしていると言える。
本来、純粋なノベルゲームはライト層から避けられがちなジャンル。しかし、本作は普段このジャンルを遊ばない人でもある程度取っつきやすく、ノベルゲーに慣れている人でも満足できるクオリティに仕上がっていると思う。結末を(ほぼ)完璧なハッピーエンドにしたのも「ライト層を含めた万人受け」を狙ったと考えれば納得がいく。
とはいえ、「ダンガンロンパ」や「シュタインズ・ゲート」は、今でもリメイクや移植などでSwitchでも手軽に遊べるし、「ダンガンロンパ」は新作も出るし、本作が面白かった人には「ダンガンロンパ」など他の作品にも触れてほしい気持ちもある。ミニゲームは鬱陶しく感じるだろうし、何かと悪趣味で全体的に下品だし、仲間同士で絆を深め合うシーンはほぼないけど。
にしても、ファンに向けての公式からのコンテンツ提供の方法や熱量を見ると、何となく「ラブライブ!」などのアイドル系コンテンツに近い印象を受ける。その点からも、本作は「辛い環境を乗り切った仲間同士が、平和に仲良くしている様子を見たい!細かい点はどうでもいい!」と割り切れる人の方が向いてると思う。
自分も本記事の中でいくつか気になる点を挙げたが、全体を通して満足度の高いプレイ体験だった。機会があれば次回作以降もプレイしようと思う。



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