
はじめに
前作の『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』はクリア済み。感想記事はこちら。

今回は、次回作の『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』をクリアしたので感想を述べていきます。
プレイ時間:約13時間
前作に引き続き非常に面白かった。前作と同じシステムを踏襲しつつ、異なる舞台設定で人魚を軸にしたストーリーが展開されていた。
以下、詳細な感想を書いていく。
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』の詳細な感想
臨場感のある演出&グラフィック
前作に引き続き非常によかった。
やはり、このゲームの場面に合わせてカメラアングルが切り替わり、キャラの立ち位置や距離感を変化させる手法は物語の没入感が増して非常に良い。

さらに、今作では伝承などの説明の際に、対象の物を背景にしていることがあり、視覚の変化として楽しかった。

前作との違い
前作は、主人公達を操作して「ここで何が起きているのか、何に巻き込まれているのか」を一から解き明かしていく感覚に近かった。
それに対して今作では、そもそも操作するキャラクターのことを「主人公」という言い方をしていない。それも関係しているのか、各登場人物が何を考えているかがプレイヤーに対して隠された状態で進むことが多い。
特に感じたのが、終盤で里と生駒が監的哨跡で出会うシーン。プレイヤーからすると、先に里視点で生駒と会い「生駒の正体が知重本人だった」という新情報を知る。しかしその後、勇佐視点に移ると「実は既に里はそのこ情報を知っていて、時間稼ぎのためにしらばっくれていた」ということを知ることになる。このように操作するキャラクターの情報によってプレイヤーを騙してくるのは前作になかった構図だったので面白かった。
それ以外にも、勇佐の本当の目的、里の性格が変わった理由、結命子の事情など、物語を進めながら各登場人物の思惑や経緯を紐解いていく側面が大きいと感じた。
システム面
前作より、以下の点で変更されていた。
・ストーリーチャートの並びが時系列通りではないと明言される
・メニューを開いた時に、水中のような水しぶきが上がる演出が入る(前作はブラウン管テレビのような演出)
ただし、ストーリーチャートを気軽に確認できない仕様については前作と変わっていなかったので残念だった。
メタ要素
前作以上に「プレイヤーに何かしらの役割が与えられている」ということは序盤から示唆されていた。途中で案内人から「あなた様が何なのか、それもお考えながらお進みください」という直接的なことも言われる。もう「パラノマサイト」というシリーズ自体が、メタ要素を前提とした作品として成り立っていると感じた。
とはいえ、この手の仕掛けはメタ要素に限らず、不意打ちだからこそ衝撃は大きくなるものであるため、前作以上の驚きはなかった。そして、明かされる真実が「プレイヤーは首を刎ねられ、分裂した勇佐の意識」。
前作では、非常に高い能力を持った陰陽師であるセイマンが『蘇りの秘術』を作り出した経緯や、自身の意識も「送り提灯」に込めている、という様々な伏線があったので「プレイヤーの正体はセイマンの意識です」と提示されても「あ~なるほど」と素直に受け止めることが出来た。
本作では「たまたま頭部を斬り落とされ、切り離された勇佐の意識があなたです。しかも時空を渡り、他者に乗り移る能力をお持ちでした」と伝えられる。
かなり納得がいかない。
なぜそんなに都合良く時空を渡れたり、他社に乗り移る能力を保有しているのか。勇佐が八百命寿であることを考えても、八百命寿の意識にそのような能力が携わる描写は特になかったので、もう少し説得力のある根拠や理由付けが欲しかった。
真エンドの条件
今作は、途中で挟まる質問は大体一発で正解していた。知重の配った名刺を回収するのも、すぐに「双奴とキルケの能力に頼ればいい」とピンときたため、一発で正解した。
問題は真エンドの条件。むずすぎる。
色々やったけどわからないので攻略サイトを見た。
ロード画面の一番下になんかある
→んなとこ見ねえよ
ウロコを玉手箱に入れてバックログを見る
→こんな時にそんなもん見ねえ
タイトル画面で人魚に話しかける
→途中でやめる時はSwitchをスリープにしていたため、タイトル画面に一切戻らないから「ここを通るはず」と言われても全くしっくりこなかった。そもそも人魚がタイトル画面にいたことすら忘れてた。
あまり時間を掛け過ぎるとゲーム自体が嫌いそうになりそうだったから、早々に切り上げて攻略サイトを見たけど大正解だった。
特に最後のタイトル画面の人魚に関しては一生考えてもわかりそうにもなかった。
終わり方
前作のように今までのことを無かったことにする終わり方ではなく、積み重ねてきたルートの延長線上で、自分たちが望んだ未来を掴み取る形になっているのは良かった。
一方で、山科や和歌村は知重に殺されたままであり、菊子の生死が展開に影響しない点は気になった。せっかくなら「誰も死なない」終わり方でもいいのに。というか「誰も死ななかった場合に真エンドに入る」とかの方がわかりやすいんだが。
真エンドでは、里が人魚の肉を口にし「不老不死のおかわり」をする。これから勇佐は795年、里は800年、二人で共に生きていく道を選ぶ。
前作では「蘇りの秘術」を否定し「現実を受け入れて生きていこう」といった終わり方だった。それに対し、本作では『不老不死は呪い』という前提がありつつ、最終的に自ら望んで不老不死になり、エピローグでは幸せな生活を送ったことが描かれている。
出会って一か月の二人が、これから800年一緒にいることを選ぶ。これは『「運命」の出会いは「呪い」すら凌駕する』というアヴィみたいなロマンチックな捉え方も出来るかもしれない。作中で彦星と織姫の話が出てきたのも、この二人の関係性を示唆しているのかも。
本来「不老不死」は明確な呪いであり、フィクションにおいて不老不死を得た場合は「バッドエンド」になるのがセオリー。前作でも「蘇りの秘術」が使われたら問答無用でバッドエンドだったように、本作でも「やっぱり不老不死なんてダメだよね、自然の摂理に従って頑張って生きていこうね」的な着地をすると思っていたので、最終的に「もう一度不老不死になる」という結末は意外だった。これが本当に「ハッピーエンド」なのかは微妙なところだが「こういう終わり方もあるんだな」と感心させられた。
とはいえ、本作では「不老不死」と言っても期限付きなので、「不老不死」というより「寿命の大幅な延長」に近い。これが『永遠の不老不死』になると話は変わってくるのかもしれない。
キャラクター毎の感想
水口勇佐
最初のミニゲーム「素潜り」で船に戻り切れなかった時、前作までは「死亡」と表示されていたにも関わらず、ここでは「失敗」と表示されたため『勇佐自身に何かしら秘密があるんだろうと』と思った。
最初に首を斬られて死ぬ時も意味深だったので「生き返るんだろうな」と予想付いた。そこから分裂した意識が自分とはさすがに思わなかった。「勇佐(ゆうざ)」と「ユーザー」を掛けてたりするんだろうか。
物語の終盤で「既に里と深い関係だったこと」「自殺によって不老不死であることを認知していたこと」が明かされた時は「やられた~」と思った。
白浪里
最初の言動やノリがあまりにも勇佐と同じだったため「里が勇佐の母の生まれ変わり、または母の意識が入った存在」と思っていた。結果、ただお互い好きだったから似ていただけで、母は全く関係なかった。
物語りの途中で更新された資料内に「人魚の肉を食べて不老不死の身体になり、八尾比丘尼となったお里という娘がいたという伝承が残されている」という文章があり「あ~これが里本人のことなんかな」と察してしまっていた。そのため、その後に里が斬られて再生する場面で資料のテキストがドアップになる演出を見ても「やっぱそうなんだ」という答え合わせ程度の感情に留まってしまった。これだったら資料ちゃんと読まない方が良かったかも。
ただ、初音姫が里であるというのは全く予想してなかったので「え!?お前!?」と大層驚いた。こういうのでいいんよ。
望んでいないにも関わらず八百命寿にされ、400年海底に沈められていたにも関わらず、死を目前にして恐怖を感じる。そして、もう一度不老不死になることを選ぶ。それほどまでに勇佐との出会いが運命をたったと思うと、理屈を超えたロマンを感じる。
雲居アザミ
本作で一番の聖人だと思った。良い奴すぎる。
自身も5年前の事故で父親を亡くしているにも関わらず、周囲の偏見にすることなく、終始勇佐のことを案じ続ける。勇佐が未来の光景を伝えた際は、盲目的に信じるわけでも頭から否定するのではなく、実際に自分の目で確かめてから勇佐を支持するのが、本当に勇佐の味方であることが伝わってきて非常に良かった。
と言いつつ、「5年前の事故の時に沖に出た人の中に、呪人がいたのではないか」という話題が出たときに、一瞬アザミの父を疑ってしまった。本当にごめん。
志貴結命子
結命子視点の時だけ、何の説明もなく「視覚効果」という項目があり、一切説明がないため怪しんでいた。警察関係者だったので「まぁそういう能力を持ってるのか」ぐらいに思っていたが「人魚同士はお互いが判別できる」ことの伏線だった。
結命子が人魚だと判明した時が本作で一番驚いたシーンだったかもしれない。「ああ、そういうことか!」と思わず口に出してしまっていた。やたら主婦に拘っていたり、旦那が霊術者だったり、「視覚効果」のコマンドがあったり、様々なことが一気に繋がる感覚が気持ち良かった。
結命子がアヴィに対して人魚のことを話している時は「ふーん、そんな人魚がいたんだ」としか思っておらず、キルケが「あ、まだ気付かないんだ」と言ってようやく気付いた。我ながら察しが悪い。
キルケ・ルナーライト
本作で一番好きなキャラクターだった。めっちゃ可愛い。「ルナーライト」という「月+光」の厨二心をくすぐる名前もたまらない。キルケは覚えにくい。
普段がかなり冷静なので、ふとした時に慌てた表情になるところが可愛かった。

肩のところ、リュックでも背負ってるのかと思ってたら、肩が出てる服だということにクリア後に気付いた。
キルケの行動も割と興味本位であり「呪いをどうにかしよう」という正義感で動いているわけではないため、性格は違うけどスタンスとしてはアヴィと一緒で似た者同士な気がする。
アルナーヴ・バーナム
通称アヴィ。ただひたすらロマンを求める男。他のキャラクターと違って興味本位で伊勢にいただけにも関わらず、なぜか重要な情報を握っている。エンディングも2種類用意されている優遇っぷり。本人は不老不死を望んでいたわけではないものの、いざ不老不死になったらしっかり謳歌しているのがアヴィらしい。
個人的に好きだったのは、ロマンを求め続けてきたアヴィに対して、里が理由を正直に伝えることで玉手箱を譲ってもらうシーン。ここまでアヴィの行動原理が自分の興味やロマンであることをまざまざと見せつけられていたのため、ここで譲るのは納得感があったし熱かった。
それを見て「お好きにどうぞ」というスタンスのキルケも好き。
総評
「前作とどちらが良かったか?」と問われれば、「ほぼ同じくらい」というのが率直な感想。どちらも非常によく出来たADVだと思う。
強いて挙げれば、ホラー描写がマイルドになった点や、真エンドがそれまでの展開の集大成として締めくくられる点から、個人的には今作の方が好みかもしれない。今作の方が好きなキャラクターが多いのも大きい。
ただ、一度メタ要素が『パラノマサイト』の前提として認知されると、ここからプレイヤーに初見以上の驚きを与えるハードルはさらに上がる。そういった課題をどう解決していくのか、今後のシリーズ展開に期待したい。


コメント